音の処理の仕方 ― ロングトーンの“おしまい”を美しくする3つのステップ

音の処理の仕方 ― ロングトーンの“おしまい”を美しくする3つのステップ
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「音の処理の仕方」について、最近レッスンを通してうまく言語化できるようになってきたので、このブログでまとめてお伝えしたいと思います。

「音の処理」というと、「音がブツッと切れないように」とか「途中で減衰しないように」と

言われたことがある方も多いと思います。

でも、実際にそれをどうやってやるのか?と聞かれると、なかなか明確に説明するのは難しいんですよね。

以前の自分も、音の“おしまい”で何をしているのかを感覚的にしか説明できていませんでした。

でも最近、レッスンの中で生徒さんと一緒に観察していく中で、「こういう流れで処理すると自然で美しく聞こえる」という具体的なステップが見えてきました。

今日はその内容を、音を自然に終わらせるための「3ステップ」として紹介します。

🎵STEP 1:息を止めようとするのをやめる

まず最初のステップは、「どこかで音を止めようとする」ことをやめること。音の最後って、どうしても意識的に“止めよう”としてしまうんですよね。

たとえば

  • 舌で塞いで止める
  •  喉を閉めて止める
  •  唇をぎゅっと閉めて止める

こういう動きが入ると、どうしても響きが「ブツッ」と切れてしまいます。まずは、それをやめること自体を目標にしてみてください。

音程がぶら下がったり息だけがスカーと流れて上手く処理しきれなくても大丈夫です。実は、正しい方向に向かっている途中段階。

息の流れを止めていない証拠でもあります。

感覚としては、楽器を「息をなるべく最後まで流し続ける」こと。そして、「振動を止める」ではなく“振動が自然と終わる”というイメージを持つことです。

つまり、息はまだ流れているけど、唇の振動だけが静かに収束していく状態。

そうやっていくと、体を無理に力ませたり、どこかを塞いだりすることなく、“ただ振動が終わっただけ”という自然な音の終わり方になります。

これが、美しい音の処理を始めるための第1ステップです。

 

🎵STEP 2:支えを残したまま終わらせる

ここからもう一歩先へ進むために必要なのが、「支えを残したまま終わらせる」という意識です。

全く支えがないまま息だけを弱めてしまうとステップ1のようなピッチがぶら下がったり息がスカーと流れてしまいがちです。

使える支えは以下の2つです。

・息の支え。

・口の支え

そもそも「息の支え」とは何か?

“支え”という言葉、よく聞くけれど実際には何をしているのか分かりづらいですよね。

息の支えとは、「吸う力」と「吐く力」を拮抗させてバランスさせることです。

例えば息を吸うとき、胸や肋骨がふわっと持ち上がります。

その「吸う力」を、吐いている最中にもほんの少しだけ残してあげる。

たとえるなら、シーソーのようなイメージ。

片方にガタンと傾くのではなく、反対側に少しだけ力をかけてバランスを取ることで、シーソーがふわっと安定する。

それと同じで、吐く力の中に「吸う力」をほんの少し加えることで、息が安定して“支え”が生まれるんです。

💡理想は、「吸う力」と「吐く力」がごくわずかに釣り合っている状態。

これが「支えられている感覚」を生み出します。

 

唇を“まったく使わない”は本当か?

最近、他の奏者のYouTube動画解説などを見ていると、

「唇で音を切らない方がいい」

「アンブシュアを動かして塞がない方がいい」

という説明をよく耳にします。

たしかに、それ自体はとても正しい考え方です。

唇を無理に締めたり動かしたりして音を止めてしまうと、響きが途切れてしまいます。

でも音の処理のときに、唇をまったく使っていないか?

といえば、僕はそうではないと思います。

 

💡アンブシュアの支えが“ゼロ”では成り立たない

実際、アンブシュアの支えがまったくない状態で、息のスピードを緩めていけば、ピッチは確実にぶら下がります。つまり、完全に「何もしていない」わけではなく、ほんのわずかに唇で支えを残している。

「唇を使わない」ではなく、「唇を止めないように支える」

このわずかな違いが、音の終わり方を自然に、そして美しくしてくれます。

🎵STEP 3:減衰を“感じさせない”ように整える

支えを使えるようになってくると、

今度は音が少し減衰気味に聞こえることがあります。

最後の方で自然にディミヌエンドしてしまう感じ。

これ自体は悪いことではありませんが、

聴いていてほとんど分からないくらいの変化に整えてあげるのがポイントです。

 

💡わずかな支えでコントロールする

ここで大切なのは、支えを強くしすぎないこと。あくまでごくわずかな力にとどめておくことです。

やりすぎると、音の「お尻」がしぼんだり、ピッチが上がったりしてしまいます。

逆に、まったく支えを使わずに息だけで“まっすぐ吹く”というのは、物理的にはほぼ不可能に近いと思います。実際に上手い人のロングトーンをよく聴くと、

まっすぐに聞こえるけれど、ほんのわずかな支えの調整によって成り立っている。

その微妙なバランスが、自然で美しい「終わり方」を生み出します。

意識ではなく、身体が調整している

実際のところ、演奏中に「アンブシュアをこう動かそう」とか、「今この筋肉をこう使おう」と意識的にコントロールしているわけではありません。

むしろ、音を聴きながら無意識の中で身体が微調整してくれている、という方が正確だと思います。

僕らの体は、音の変化を聴き取る中で、必要な動きを自然に選び取っているんです。

たとえば、ピッチがぶら下がりそうになったときに、「支えよう」と思っていなくても、身体がほんの少しだけ反応して支えてくれている。

つまり、意識ではなく、聴覚が身体を導いている

これができるようになると、力みのない自然な音の処理ができるようになります。

 

まとめ

①音を止めるのではなく終わらせる。

②支えを残して調整する。

聴こえないくらいのわずかな変化で整える

ここまでの3ステップを段階的に踏んでいくことで、音の処理はぐっと自然で、美しくまとまりやすくなります。

音の処理を言語化するのが難しい理由は、

おそらく僕たち奏者がほとんど知覚できないくらいのわずかな力で微調整しているからなんじゃないかと思います。

実際、僕も「何かをしている」という感覚はほとんどありません。

でも、おそらくどこかで、ほんの少しだけ何かをしている。それが「音を止める」というよりも、わずかな整え”なんですよね。

💫止めない支える整える。

この3ステップの流れを丁寧に踏むことで、

あなたの音の「終わり方」が変わります。今後の練習で、ぜひ試してみてください。

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